コラム

サービス残業の違法性やサービス残業を拒否できるケースについて解説

2023.08.30

「正社員は、サービス残業をしなければいけないの?」、「サービス残業を拒否したらクビになるの?」

 

サービス残業は、残業代が発生しないため、拒否したいと思っても、他の従業員がサービス残業をしていると、サービス残業を断りにくいことがあるでしょう。

 

ですが、労働基準法上、サービス残業を従業員にさせることは違法で、拒否できます。

 

今回は、サービス残業の違法性やサービス残業の拒否について解説します。

サービス残業を拒否できるのか

サービス残業とは、賃金を払わないで仕事をさせる残業のことを意味します。

 

例えば、時間外労働や深夜労働、休日労働をしたにもかかわらず、賃金が支払われないことです。

 

労働基準法で、企業は、従業員を、1日8時間、1週間で40時間以上を超えて働かせてはいけないと定められています。

 

企業が従業員を上記の時間以上に働かせた場合、時間外労働(残業)として扱われるため、企業は、従業員に残業代を支払わなければいけません。

 

 

割増賃金を支払わない場合、労働基準法第119条の規定により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。

 

サービス残業は違法であるため、サービス残業を強要された場合は拒否することができますし、サービス残業をさせること自体が企業として不適切な行為をしているということになります。

サービス残業を拒否できるケース

一般労働者は、サービス残業を拒否できます。

では、残業を拒否できる理由について解説します。

 

残業命令をすることが違法

法定の上限時間を超えた残業や企業が残業を命じることができない場合、企業が残業命令をすることが違法となるため、サービス残業を拒否することができます。

 

企業が労働者に残業を命じるためには以下の条件が必要になります。

 

・労働契約に残業が含まれている

・36協定が締結されている

・労働基準監督署に届け出がある

 

36協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定のことです。

 

従業員に法定労働時間を超えて労働をさせる場合、36協定を締結して、所轄の労働基準監督署に届け出をする必要があります。

 

また、労働者との労働契約や就業規則に残業をすることが明記されていなければいけません。

 

この条件を満たさずに出した残業命令は、労働基準法違反となるため、賃金が支払われていても、拒否できます。

 

残業を命じれる条件があっても、月45時間・年間360時間の上限を超えて残業を命じることはできません。

 

上限を超えた残業命令も違法であるため、サービス残業を拒否できます。

残業する必要がない

業務上残業する必要がないにもかかわらず、嫌がらせなどの目的でサービス残業を命じている場合も拒否できます。

 

「他の従業員もサービス残業をやっているよ」と言って、急ぎでない仕事を時間外にさせることが該当します。

 

業務上の必要がない残業を強要することは、パワハラに該当するおそれがあります。

残業を拒否する正当な理由がある

体調不良、妊娠や育児、介護といった正当な理由がある場合、残業を拒否することができます。

 

妊娠中の女性や、出産から1年以内の女性から請求があった場合、企業は残業を命じることはできません。

 

また、3歳未満の子どもを養育している従業員や未就学児の看護をしている従業員に対しても残業命令に上限があり、上限を超えた残業命令を拒否することができます。

 

サービス残業を拒否したらどうなるのか

サービス残業を拒否するとクビになるかもしれないと心配している方もいるでしょう。

 

サービス残業は違法なので、サービス残業を拒否しても解雇の理由にはなりません。

 

ですが、従業員が残業命令をサービス残業だと思い込んで、正当な理由がないにもかかわらず、残業を拒否し続けたら、業務命令に従わなかったという理由で、解雇や減給という処分を受ける可能性があります。

サービス残業を拒否する方法

サービス残業を拒否するには、どのような方法があるのか、以下で見てみましょう。

残業命令の適法性を確認して、サービス残業を拒否する

残業命令が適法なのかどうかを確認し、違法な残業命令を拒否しましょう。

 

残業命令が適法か判断するためには、以下のことを確認する必要があります。

 

・労働契約や就業規則に残業が書かれているかどうか

・36協定が締結されているかどうか

・法定の上限を超えた残業にならないかどうか

 

上記3つの条件を満たしていない残業命令は違法であるため、拒否できます。

 

適法な残業命令であったとしても、賃金が支払われないサービス残業は違法になります。

 

サービス残業を拒否することは労働者の当然の権利のため、違法なサービス残業をしないようにしましょう。

社内の相談窓口に相談する

サービス残業を拒否できない人は、社内の相談窓口に相談するといいでしょう。

 

適切に勤怠管理をしていなかったり、職場が残業申請をしにくい雰囲気であると、サービス残業が起こってしまいます。

 

そのため、社内の相談窓口に相談して、職場でサービス残業をなくす対策をしましょう。

労働基準監督署に報告する

サービス残業が職場で当たり前となっていて、社内での解決が難しい場合、労働基準監督署に検査と指導を依頼しましょう。

 

労働基準監督署は、労働者の訴えがあると、立ち入り調査や指導をすることができます。

弁護士に相談する

弁護士に相談するという方法もあります。

 

弁護士に相談すると、未払いの残業代の請求をすることもできます。

 

弁護士は、依頼者の利益になるように動いてくれるので、残業代の請求をしたい人は弁護士に相談するといいでしょう。

残業代を請求する

サービス残業代を請求するという方法もあります。

 

それには、サービス残業の証拠を残さなければいけません。

 

証拠というのは、例えば、企業の勤務記録、パソコンのログオン・ログオフの記録、勤務時間を詳細にメモしたノートなどが挙げられます。

 

このような証拠を集めて、企業に請求書を送付します。

まとめ

他の従業員がサービス残業をしていると、サービス残業をやってしまいがちですが、サービス残業は、労働基準法に定められた割増賃金を支払わない違法な残業です。

 

サービス残業を続けていると、心身に不調をきたしたり、モチベーションが低下するため、サービス残業を強要されたら、違法性を確認してから、断りましょう。

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