個人事業主として開業するために必要な手続きとは?
2023.08.31
個人事業主として仕事を始めるには、さまざまな手続きが必要です。
役所での手続きや必要書類を用意することは、手間がかかります。
ですが、青色申告者として開業すると、大幅な節税効果を得られるというメリットがあります。
今回は、個人事業主として開業するのに必要な手続きについてご紹介します。
個人事業主とは
個人事業主とは、独立して継続的に事業を営む方のことです。
例えば、医師、弁護士、公認会計士、税理士、運送、クリーニング、理容などが挙げられます。
従業員を雇っていても、法人化していなければ、個人事業主として扱われます。
個人事業主になるには、税務署へ開業届を提出しなければいけません。
開業届を提出すると、青色申告ができるといったメリットがあるため、手続きをしておきましょう。
個人事業主が開業時にすること
個人事業主となる場合、開業時に何をすればいいのでしょうか。
以下で見てみましょう。
社会保険に加入する
会社を辞めて個人事業主となる場合、社会保険の手続きをする必要があります。
つまり、国民健康保険と国民年金に加入しなければいけません。
国民健康保険は、以前勤めていた会社の健康保険を任意で継続するか、国民健康保険へ加入するかのどちらかを選びます。
<国民健康保険>
退職の翌日から14日以内に、市区町村役場の窓口で、国民健康保険への切り替え手続きをします。
以前の勤務先で加入していた会社の健康保険を継続することもできます。
その場合、最大2年まで継続でき、自分で会社負担分を払います。
個人事業の収入によって、任意継続をするのか、切り替えるのかを検討するのがいいでしょう。
一般的には、国民健康保険に加入する人が多いですが、個人事業の収入が多い場合、任意継続するほうが、健康保険料を抑えられることがあります。
<国民年金>
会社を辞めて開業する場合、年金は、厚生年金から国民年金に切り替えます。
退職日の翌日から14日以内に、市区町村役場で手続きをします。
国民年金保険料は、毎年見直しがあり、2023年で16,000~17,000円です。
開業届を提出する
開業届を、原則として事業開始日から1ヶ月以内に税務署に提出します。
開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
事業の構想段階や利益が出ていない段階で、届け出をしても問題ありませんし、開業届を提出し忘れても罰則はありません。
開業届の提出は、以下の3通りの方法があります。
・税務署の窓口に提出する
・郵送する
・インターネットを使う
屋号を決める
個人事業主は、屋号をつけることができます。
ですが、屋号は必須ではなく、不要であれば事業者名で仕事をすることもできます。
屋号は、事業内容をイメージしやすい名前がいいでしょう。
また、ネットショップをする場合、同じ屋号の競合他社がいないかどうか調べた方がいいでしょう。
青色申告か白色申告かを選択する
確定申告の方法を決めましょう。
個人事業主の確定申告は、白色申告と青色申告があります。
青色申告をする場合、青色申告承認申請書を税務署に提出します。
何も申請しないと、白色申告になるため、注意しましょう。
青色申告は、白色申告よりも申告の要件が厳しくなりますが、税制上のメリットがあります。
例えば、青色申告特別控除を活用すると、最大で65万円の控除ができます。
そのため、節税のメリットが大きい青色申告をするといいでしょう。
従業員に家族を雇うかどうかを決める
家族の従業員を青色専従者として給与を経費にできることが、青色申告のメリットです。
青色専従者控除を後で申請することもできますが、税務署で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければいけません。
開業する時に、従業員として家族を雇うかどうかを検討しましょう。
開業届以外の届け出をする
開業する時に、開業届以外の届け出が必要となるケースがあります。
家族に給与を支払うために必要な「青色事業専従者給与に関する届出書」や、給与支払いをする事務所を開設した際に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。
許認可の申請をする
事業を始めるのに、許認可が必要な事業があります。
飲食店や病院は、保健所で許認可を受ける必要があり、古本店やゲームセンターは警察署が管轄しています。
営業許可が必要なのにもかかわらず、許可を取らずに開業すると処分を受ける恐れがあるため、事前に調べておきましょう。
補助金や助成金がないかどうかチェックをする
開業時に資金が必要な場合、国や地方団体の補助金や助成金の制度をチェックするといいでしょう。
補助金や助成金の情報は、インターネットで調べることができますし、商工会議所などで案内されていることがあります。
確定申告の準備を始めておく
随時、会計処理をしていないと、確定申告が近づいた時に申告作業が増えます。
したがって、確定申告の準備を早めに進めておくといいでしょう。
個人事業主の会計期間は、1月1日~12月31日で、確定申告は翌年の2月16日~3月15日にします。
ビジネス用の銀行口座を作る
プライベートの銀行口座とは別の、ビジネス用の銀行口座を作るといいでしょう。
屋号がある場合、屋号名義の口座を作ることができます。
プライベート用の口座をビジネス用の口座でも使うと、入金と支出がプライベートでのものなのか、ビジネスでのものなのか分からなくなってしまうからです。
ビジネス用の銀行口座を作ると、収支の流れがわかりやすく、ミスを防ぐことができます。
また、口座名義人が個人名よりも屋号名のほうが、取引先にとって、わかりやすく、信用が得られやすいことがあります。
インボイス制度に対応する
インボイス制度が、2023年10月1日から導入されますが、課税事業者か免税事業者かによって、対応が違うため、準備を進めましょう。
<課税事業者>
管轄の税務署に、適格請求書発行事業者登録申請書を提出して、登録が完了すると、インボイスが発行できます。
<免税事業者の場合>
免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録申請をしないとインボイスを発行できません。
そのため、取引先が、仕入れ控除を受けられず、消費税が高くなってしまいます。
取引先から消費税分の値引きを要求されるかもしれませんが、課税事業者になったら、消費税を納税する必要があります。
個人事業主が開業時に用意するといいものとは
個人事業主が開業時に何を用意するといいのか、以下でみてみましょう。
仕事用のメールアドレス
プライべートのメールアドレスとは別に、ビジネス用のメールアドレスを作りましょう。
フリーメールは、コストがかかりませんが、信頼性を高めたいのであれば、独自ドメインを取得することをおすすめします。
プリンターとスキャナー
デジタル化が普及して、紙媒体でのやり取りが少なくなっていますが、プリンターとスキャナーを使っている企業が多いため、対応できるようにするために、用意しておくといいでしょう。
領収書を発行することもできます。
名刺
新規取引先と商談をする際に、名刺を交換することがあるでしょう。
名刺は文具店や専門店で注文できますが、自分で作成することもできます。
顔写真やイラストを名刺に入れると、印象に残ります。
ホームページ
ホームページは、会社の顔です。
ホームページに、事業内容や実績を掲載すると、依頼する顧客が増えることがあります。
SEO対策をして、顧客獲得のために活用しましょう。
まとめ
今回は、個人事業主になるために必要な手続きについて解説しました。
個人事業主になるには、開業届を税務署へ提出する必要があります。
この時に、節税などのメリットを得るために、青色申告承認申請書を提出することをおすすめします。
融資を受ける時やキャッシュレス決済を導入する時に、開業届の控えが必要となるため、控えを大切に保管しましょう。