副業の解禁によるメリットとデメリット、注意点について解説
2023.10.13
就業規則で副業を禁止している企業は多いですが、2018年に、働き方改革によって、副業が解禁されました。
企業は労働力不足が続いている一方、労働者は多様な働き方を望んでいるため、副業を解禁する企業は増えるでしょう。
今回は、副業の解禁による、メリットとデメリット、注意点について解説します。
副業が解禁されるようになった理由とは
副業が解禁されましたが、実際のところは、副業を禁止している会社のほうが多いです。
従来、企業は、従業員に、勤務時に仕事に集中してほしいと考えているため、週に5日会社で働いているのに、夜や土日に、副業をしたら、平日の仕事に支障が出て、100%の能力を発揮できないと思っています。
にもかかわらず、副業を解禁する企業が増えていますが、どのような理由があるのでしょうか。
その理由について解説します。
副業をしたい従業員が増えている
副業したい従業員が増えていて、優秀な従業員を引き留めるために、副業を解禁した企業は多くあります。
優秀な従業員には、会社を通さずに仕事が依頼されて、まとまった金額の収入を得ることができます。
副業を禁止していると、そうした優秀な従業員の行動を制限することになり、もっと魅力的な会社に引き抜かれてしまうかもしれません。
働き方改革
2017年に閣議決定された働き方改革によって、副業が推進されました。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に、副業をする際のルールが明確化され、条件を満たすと、副業ができます。
従業員にとって、副業を解禁するメリット
副業を解禁すると、従業員にどんなメリットがあるのでしょうか。
以下で解説します。
収入が増える
副業をすることで収入が増えます。
将来のために貯蓄したい人や経済的に不安がある人には、大きなメリットになります。
自分がやりたいことに挑戦できる
本業ではできない仕事を、副業先ですることによって、モチベーションが上がったり、自己実現の方法を追求できます。
スキルアップ
副業先で得たスキルや知識を本業で活かすことができます。
そうすると、今後のキャリア形成につながるでしょう。
企業にとって、副業を解禁するメリット
では、今度は、副業を解禁すると、企業にどんなメリットがあるのかについて見てみましょう。
従業員のスキルアップ
副業で他社で仕事をした従業員は、社内では得られないスキルや経験を得ることができます。
そのため、従業員が、本業でそれらを生かして仕事をすると、仕事の質が上がります。
優秀な人材の流出を防ぐことができる
副業を解禁して、多様な働き方ができると、従業員の満足感が高まって、離職を防ぐことができるでしょう。
企業の魅力がアップする
副業解禁を、企業の魅力の1つとして応募者にアピールできるため、採用時に他の企業より優位になる可能性があります。
事業機会が拡大する
従業員が、副業することによって、新たな情報や人脈を得ることができ、本業に活かすことができます。
今までにないアイデアの創出など、事業機会の拡大が期待できます。
従業員にとって、副業を解禁するデメリット
副業を解禁するメリットについて解説しましたが、次に、副業を解禁すると、従業員にとってどんなデメリットがあるのでしょうか。
以下で解説します。
勤務中に業務に集中できない
従業員は、勤務中、業務に集中しなければいけません。
このことを、職務専念義務と言います。
企業と従業員が、労働契約を締結した時に、職務専念義務が生じます。
休まずに本業と副業をして、本業の業務が疎かになると、職務に専念していないことになってしまうため、注意しなければいけません。
心身の疲れを取るために十分休んで、本業と副業の業務に支障をきたさないようにしましょう。
雇用保険の適用対象外になってしまう
1週間の労働時間が、短時間の複数の業務になってしまうと、雇用保険が適用されないことがあります。
副業をする前に、雇用保険が適用される範囲かどうかを調べたほうがいいでしょう。
情報漏洩のおそれがある
副業をしている企業に、本業の企業の情報を提供してしまうおそれがあります。
そのため、秘密保持契約を結んで自社の情報を無断で提供しないように確約させる必要があります。
副業を解禁する時に、企業が注意すべき点
起業が副業を解禁する際に、どのような点に注意したらいいのでしょうか。
注意点について解説します。
就業規則を変更する
就業規則を変更しなければいけません。
具体的には、就業規則に、「許可なく他社の業務に従事しない」と記載されている場合、「勤務時間外には、他社の業務に従事することができる」と修正する必要があります。
就業規則を変更した場合、労働基準監督署に届け出る必要があります。
ルールを決める
副業に関するルールを決めて、副業の許可基準を明記する必要があります。
そうすることによって、副業をすることによるトラブルを未然に防ぐことができます。
例えば、以下のような許可基準を設けなければいけないでしょう。
・競合他社で副業をしない
・副業をする前に申請する
・副業をする場合、22時を過ぎてはいけない
・機密情報の取り扱いについての誓約書を提出する
労働時間を把握する
副業を解禁したら、労働時間を把握する必要があります。
労働基準法38条1項によって、本業と副業の通算で労働時間が計算されるからです。
注意すべきことは、通算の労働時間が、法定労働時間を超えてしまったら、残業代の支払いは、後で労働契約を締結した会社が残業代を支払う義務があることです。
また、本業と副業の労働時間は、タイムカードや勤怠システムによって管理されますが、本業先から副業先へ、副業先から本業先へ、当月の勤怠情報を提出して管理します。
社会保険を見直す
従業員が、副業先で厚生年金保険と健康保険(社会保険)の適用要件を満たしている場合、副業先でも、社会保険に加入しなければいけません。
その場合、本業の賃金と副業の賃金を合計して、2つの企業で按分して計算する必要があります。
会社員が副業する際の注意点
会社員やパート・アルバイトなどが副業する場合、副業で得た雑所得が年間で20万円を超えると、確定申告をしなければいけません。
申告をしないと、脱税になり、ペナルティの対象となってしまいます。
公務員が副業する際の注意点
公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって、副業することを制限されています。
というのも、公務員は国民の奉仕者で、公正中立な立場で職務を遂行する必要があるため、情報漏洩のリスクを回避しなければいけないからです。
ですが、「自営兼業承認申請書」を提出すれば、特定の副業を許可されることもあります。
まとめ
今回は、副業解禁がもたらすメリットとデメリット、注意点について解説しました。
副業を解禁すると、従業員は知識・スキルを高められ、企業の成長が期待できます。
ですが、情報漏洩リスクへの懸念や健康管理などのデメリットもあります。
自社に合った副業解禁がどのような内容なのか、検討してみてはいかがでしょうか。