パート従業員への有給休暇付与は必須?
2023.05.27
従業員の健康のために導入が義務付けられている有給休暇ですが、パート従業員にも有給休暇の付与が義務付けられています。
ですが、パート従業員の労働時間は、正社員に比べて変則的であるため、有給休暇の日数には注意が必要です。
今回は、パート従業員の有給休暇取得条件や有給休暇を付与する際の注意点について解説します。
パートの有給休暇の条件とは?
正社員しか有給休暇を取得できないと思っているパート・アルバイトの方も多いのではないでしょうか。
以下の2つの条件を満たすことで、パート・アルバイトでも正社員と同様に有給休暇を取得することができます。
また、契約社員・派遣社員も同様に取得可能です。
派遣社員の場合は派遣先企業ではなく、派遣会社から付与されます。
・雇用された日から6ヶ月間の継続勤務をしている
・全労働日の8割以上出勤している
継続勤務とは、企業における在籍期間を指します。
定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合は、継続勤務として扱います。
また、業務上の怪我や病気で休んでいる場合、育休や介護休業を取得した期間は、出勤したものとして取り扱う必要があります。
会社都合の休業期間は、全労働日から除外する必要があるため、注意しましょう。
パートの有給休暇の付与日数は?
パート従業員の有給休暇日数は、所定労働日数に応じて付与されますので、フルタイムで働く正社員に比べると、付与する日数は少なくなります。
労働基準法では、週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者をパートタイム労働者として、年次有給休暇の取得日数を定めています。
1週間の所定労働日数が1日で、1年間の所定労働日数が48日~72日のパート従業員
1週間の所定労働日数が2日で、1年間の所定労働日数が73日~120日のパート従業員
1週間の所定労働日数が3日で、1年間の所定労働日数が121日~168日のパート従業員
1週間の所定労働日数が4日で、1年間の所定労働日数が169日~216日のパート従業員
有給休暇の有効期限
有給休暇の有効期限(時効)は、労働基準法によって2年と定められており、その期限を超えると消滅します。
ですが、新しく有給休暇が付与されても、昨年度の有給休暇が残っている場合(付与されて2年以内の場合)は繰り越して取得することができます。
有給休暇は、最大(継続勤務年数6.5年以上の場合)で年間20日付与されますので、昨年繰り越し分と新年度付与分を合わせて最大40日分の有給休暇を保持することができます。
退職日が決まっているものの、有給休暇が余っている場合は、残りの有給休暇を全て消化することができます。
もちろん、退職日までに使い切ることができなかった場合、消滅してしまうので注意する必要があります。
有給休暇は労働基準法で守られているため、基本的に雇用主は有給休暇の申請を拒否できません。
退職が決まっていても、有給休暇の取得ができます。
最低5日間の有給休暇取得が義務化
以前まで、雇用主は労働者に有給休暇を取得させなければならないという義務はありませんでした。
ですが、有給休暇取得率の低調という状況があり、働き方改革関連法案をもとに2019年4月から全企業で、少なくとも年間5日の有給休暇を取得させなくてはならない義務が課せられることになりました。
有給休暇取得義務の発生する対象者は、有給休暇が10日以上付与される労働者です。
これは、正社員だけでなく、パートも対象になります。
有給休暇を付与する際の注意点とは?
有給休暇を付与する際の注意点について見てみましょう。
就業規則に記載する
有給休暇は、就業規則の絶対的必要記載事項に含まれており、考え方やルールなどを必ず記載する必要があります。
有給休暇の就業規則への記載項目の例を見てみましょう。
・発生要件
・付与日数
・比例付与
・取得手続
・時季変更権の行使
・計画的付与
・基準日の設定と分割付与
・有給休暇の消滅
・時間単位の付与
有給休暇の付与日数や付与方法は、就業規則に分かりやすく記載しましょう。
不利益な取り扱いは禁止されている
労働基準法136条では、有給休暇を使用する従業員に対して不利益な取り扱いはしてはならないと定めています。
有給休暇は従業員に保障されている権利であり、仕事を休むことでデメリットが生じてはなりません。
具体的な不利益な取り扱いの例を見てみましょう。
・賃金の減額を行う
・賞与の算定で有給休暇取得日を欠勤扱いにする
・有給休暇の取得を抑制する
・従業員が有給休暇の取得を躊躇するような職場環境は改善が求められます。ライフワークバランスに優れた企業を目指しましょう。
有給取得日を変更する権利「時季変更権」とは?
有給取得条件を満たしたパート・アルバイトの労働者には、原則として希望日に有給を与えなくてはなりません。
ですが、企業の運営に支障をきたす場合、時季変更権を行使することで、有給申請を拒否することができます。
本有給休暇は労働者に認められた権利であるため、労働者の希望を可能な限り受け入れなければいけませんので、時季変更権を行使できるのは、職場の正常な運営が難しくなる場合に限ります。
例えば、お盆や年末など繁忙期に有給取得希望者が重なった場合や特殊免許をもった労働者など、属人性の高い職場では、時季変更権で調整できます。
まとめ
有給休暇は、従業員にとって欠かせない権利です。
パートで働く従業員であっても、要件を満たしていれば有給休暇は必ず付与しなければなりません。
有給休暇を正しく付与し、取得率を高めることは、従業員のストレスや疲労を解消します。
働き方改革の推進もあり、従業員の積極的な有給休暇の取得が必要です。
全従業員が健康に働ける職場環境を構築しましょう。