コラム

労働基準法における休憩時間とは?

2023.08.15

労働基準法で、従業員の休憩時間が定められています。

 

休憩時間は、労働者にとっては心身を健やかに保ち、仕事に意欲的に取り組むために必要です。

 

ですが、休憩についてのルールがなく、きちんと休憩が与えられていないと、従業員のモチベーション低下、生産性低下、労災事故なったり、違法になる恐れがあります。

 

今回は、労働基準法で定められた休憩時間について解説します。

 

休憩を取らないと、従業員の心身の健康を害したり、。働き方改革に大きな影響を与えるため、休憩時間について度見直しましょう。

労働基準法で定められた休憩時間とは?

休憩時間は、労働基準法第34条で、「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保証された時間」とされています。

 

労働基準法では、労働者がとる休憩時間の最低ラインは、以下のように記載されています。

 

・労働時間が6時間以内の場合、最低休憩時間はなし
・労働時間が6時間から8時間以内の場合、最低休憩時間は45分
・労働時間が8時間を超す場合、最低休憩時間は1時間

 

例えば、「7時間の労働で1時間の休憩を与える」「6時間以内の労働で30分の休憩を与える」というように、基準を上回る長い休憩時間を与えることは、従業員の心身に有利になるので、問題ありません。

 

また、休憩時間は、労働時間のような使用者の指揮命令下にあってはいけないことになっています。

労働基準法における休憩の3原則

労働基準法第34条に、休憩の3原則が規定されています。

 

以下で見てみましょう。

一斉付与の原則

労働基準法第34条第2項では、「休憩時間は、一斉に与えなければならない」と定められています。

 

従業員それぞれが好きなタイミングで休憩を取ることは禁止されており、職場の全従業員が同時に休憩を取らなければいけません。

 

ですが、窓口対応をする職場などでは、一斉休憩が取れず、交替して休憩を取らなければいけません。

 

このようなケースでは、労使協定に定めることによって、休憩を交代制として個別に休憩を与えることが認められています。

途中付与の原則

労働基準法第34条第1項では、「休憩時間は労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。

 

つまり、休憩時間は、労働と労働の合間に取るということになります。

 

勤務開始前や勤務終了後に休憩を与えても、休憩を与えたことにはなりません。

自由利用の原則

労働基準法第34条第1項では、従業員は、休憩時間中に、自由に過ごさせなければいけないと規定されています。

 

例えば、休憩時間中に来客対応や電話対応をさせたり、休憩時間終了の5分前に着席させると、法律違反とみなされる場合があります。

会社は、従業員の休憩時間に干渉できないため、従業員は食事をしたり、スマホを使ったり、外出したり、昼寝をしたりすることができます。

 

労働基準法第119法により、使用者がこの義務に反した場合、30万円以下の罰金か6か月以下の懲役が科せられます。

労働基準法における休憩の与え方についてのルール

休憩に関しては、労働基準法に定められた基準に満たない休憩が与えられたり、法定以上の休憩を与えられているといったケースがあります。

 

では、休憩のルールについて解説します。

休憩時間のルール

労働基準法では、6時間~8時間の労働には45分以上の休憩、8時間を超える労働には1時間以上の休憩を与えることを義務づけています。

 

8時間を超える労働とは、始業から終業の拘束時間ではなく、実労働時間を指します。

 

8時間1分働いた場合、1分残業しており、実労働時間は8時間を超えるので、追加で15分、つまり、合計1時間の休憩を与えなければいけないことになります。

休憩の分割

労働基準法では、6時間を超え8時間以内の労働には45分以上、8時間を超える労働については1時間以上の休憩を与えなければいけないことを定めていますが、休憩の分割についての規定がありません。

 

そのため、1時間の休憩を、30分を2回に分割して取ることもできます。

 

ですが、分割の規定がないからといって、例えば、5分単位で休憩を与えるようなやり方は、休憩の合計時間が基準を満たしていても、休憩と認められないことがあるため、注意したほうがいいでしょう。

雇用形態による違い

休憩時間は、雇用形態に関係なく、実労働時間によって決まります。

 

正社員は休憩を取らせて、アルバイトには休憩を与えないということは違反になります。

 

アルバイトでも、実労働時間が8時間を超えていれば1時間以上の休憩を与えなくてはいけないのです。

 

例えば「、正社員は1時間休憩で、パートは45分休憩」といった雇用形態で休憩時間が異なるルールは、労働基準法違反になります。

 

また、正社員であっても、1日の実労働時間が6時間以下であれば、労働基準法上、休憩は与えなくても問題ありません。

 

ですが、就業規則や個別の労働契約で、法定以上の休憩を与える旨を定めている場合は、就業規則や個別の労働契約が優先されるため、注意したほうがいいでしょう。

休憩時間の付与対象とならない人とは

休憩時間は、全従業員に与えなければいけません。

 

ですが、休憩の規定が適用除外とされる労働者もいます。

 

<労働時間等に関する規定の適用除外> 労働基準法第41条より

 

①別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

②事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

③監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

上記①の「別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業」とは、「農林業」「水産業」「畜産業」「養蚕業」を指します。

 

これらは天候に左右される事業として、労働時間・休憩・休日の規定が除外されます。

 

②は管理監督者と機密事務取扱者が該当します。

 

③は守衛や炊事婦などの職務が該当します。

 

③を労働時間等に関する規定の適用除外とするには、 労働基準監督署長の許可が必要になります。

 

他に適用除外とされる業務について、以下に挙げます。

 

・高度プロフェッショナル制度の対象者

・業務委託や請負といった契約形態

休憩時間が労働時間に該当するケース

休憩時間は、労働時間のため、該当時間分の未払い賃金を請求されたというトラブルに起こっています。

 

休憩時間中は、働いていないため、賃金は発生しません。

 

ですが、企業が休憩時間と思っていても、労働と離れられない状態であった場合は、休憩時間であっても労働時間とみなされるため、別途、休憩を与える必要があります。

 

では、休憩時間であっても労働時間とみなされるのは、どんな時なのか見てみましょう。

 

このような場合、未払賃金のトラブルに発展する可能性があるため、注意しましょう。

休憩中の電話対応と来客対応

休憩中に、電話対応や来客対応ができるよに、職場に待機するといったように、上司からの指示で、すぐに労働に従事できる状態で待機することです。

この時間は、手待ち時間(待機時間)と呼ばれています。

 

「すぐに仕事ができるように待機している=労働時間」とみなされるので、休憩時間ではなく、労働時間になります。

 

この場合、別途休憩を与えなければいけません。

たばこ休憩

たばこ休憩は、長くて5分程度ですので、その間は仕事をしていないとみなされます。

 

ですが、過去の判例で、喫煙中も仕事から離れられなかったという理由で、喫煙時間を休憩時間ではなく、手待ち時間とされたことがあります。

 

そのため、喫煙時間が、休憩時間か労働時間かを判断するには、完全に仕事から離れていたかどうかが決め手になります。

仮眠時間

夜勤などに設けられる仮眠時間は、仕事をしていないため、仮眠時間を休憩時間とみなす企業があります。

ですが、仮眠中であっても、緊急事態が発生した場合、迅速に対応しなければいけないため、労働から完全に解放されていないため、手待ち時間とみなされて労働時間と判断されるケースがあります。

賃金計算時に、仮眠時間を労働時間として算出しましょう。

まとめ

働き方改革など、労働環境が著しく変化している昨今、何かのタイミングで、休憩に関する労働基準法違反が露呈して、トラブルになってしまうことが考えられます。

 

行政や専門家のアドバイスを聞いて、休憩について見直しをするといいでしょう。

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