コラム

企業防災とは?取り組むべき理由と対策を解説

2023.05.09

日本では、地震・台風・大雨・土砂災害などの自然災害が頻発しています。

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災の経験から、事業の継続や復旧に多くの時間を要し、企業防災の必要性を再認識させられたことがあり、企業が災害への対策を行う企業防災の取り組みが急務となっています。

 

企業においては、人命を守るだけでなく、緊急時の事業継続に必要な備えも重要です。

 

災害から従業員や企業資産を守るために、企業はどのような施策を講じるべきでしょうか。

 

今回は、企業が災害対策に取り組むべき理由、企業防災の方法について解説します。

企業防災とは?

企業防災とは、自然災害の発生において企業が取り組むべき対策を指します。

 

個人による災害対策とは異なる側面があり、「防災」と「事業継続」の 2つの 観点があります。

 

では、防災の観点からの企業防災と事業継続の観点からの企業防災について見てみましょう。

防災の観点からの企業防災

企業防災における「防災」とは、従業員や顧客の安全 を確保し、帰宅困難者の発生を防ぎ、被害を最小限にするための対策です。

 

災害発生時の行動マニュアルを作成すること、地震・火災からの避難訓練や初期消火訓練、AEDを用いた応急救護訓練などを実施することが挙げられます。

 

他にも、飲料や食料品の備蓄・防災訓練・建物の耐震補強も挙げられます。

 

従業員に備蓄品の内容や保管場所について周知し、使用期限の管理や品目の見直しなどのマネジメントをする必要もあります。

事業継続の観点からの企業防災

事業継続の観点からの企業防災とは、災害などの緊急事態でも、早急に事業活動を復旧させ、自社資産への損害を最小限にとどめるための施策を指します。

 

例えば、安否確認システムの導入が挙げられます。

 

安否確認システムが導入されていると、緊急時で電話やメールが使用できなくなっても、従業員と連絡を取ることができます。

 

災害時でも事業活動を継続するためには、こうしたシステムにより従業員たちと迅速に連絡を取り協力しあうことが欠かせません。

 

復旧作業マニュアルを策定し、適切な改訂をしておくことも、非常時の安定した事業継続を目指すためには必要なことでしょう。

企業が災害対策に取り組むべき理由とは?

日本は、地震や台風などの自然災害が毎年発生しています。

 

ですが、コストをかけてまで、企業防災に取り組まなければならないのかという疑問も出てくるでしょう。

 

では、なぜ企業が災害対策に取り組まなければいけないのか。その理由について解説します。

従業員の安全配慮義務

企業は、従業員や顧客の生命を最優先しなければならない社会的責任があります。

 

また、労働契約法第5条で労働者の安全への配慮が定められており「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と示されています。

 

安全配慮義務を怠った結果、従業員が怪我をしたり、死亡した場合、企業は上記の法に違反していると判断され、損害賠償に発展する可能性も生じます。

 

人道的な観点だけでなく、法令遵守のためにも、企業は、災害時に従業員の安全を確保するための配慮をしなければいけません。

自然災害が多い

自然災害発生件数とその被害額は増加傾向にあり、自然災害のリスクは高まっています。

 

また、豪雨による水害も多発しており、自然災害が企業の活動に大きく影響しています。

 

自然災害が増加傾向にあり、企業の被災リスクも高まっているため、企業が災害対策をする必要性も年々高まっているのです。

災害による事業継続困難のリスク対策

緊急事態にどのように対応するかを計画した事業継続計画の策定することは、重要です。

 

被災地域以外から商品を納品することなどを事前に策定しておくと、取引先から信頼を得ることができます。

 

緊急事態になっても、業務を速やかに再開でき、事業が停止してしまうリスクを最小限にとどめることができるでしょう。

 

もし非常時に事業継続が困難になると、取引先や仕入れ先も被害を被ります。

 

対外的な信頼を確保するためにも、事業継続計画の策定は必須です。

顧客からの信頼

災害に、適切な対応をすると、自社の被害を抑えれるだけでなく、企業としての信頼を高めることができるでしょう。

 

災害があっても、通常通りの顧客対応ができれば、顧客からの大きな信頼を得られます。

 

そのため、災害後に顧客が増えることにもつながります。

企業防災:防災の観点での対策方法とは?

企業防災として何をしたらいいのでしょうか。

 

まず、防災の観点での対策方法について見ていきましょう。

災害時のマニュアル作成

災害マニュアルを作成することが、災害対策として取り組むべきことです。

 

災害への対応手順や役割分担、連絡を行う手段、緊急連絡網、従業員の避難場所などを、マニュアル内に規定しておくと、非常時の混乱を避けれます。

 

マニュアルを作成したら、従業員への周知しましょう。

 

さらに、定期的に内容を見直し、必要に応じてアップデートができるように、マニュアルの運用方法についても定めておく必要があります。

防災グッズの準備

勤務時間中に災害が発生した場合、従業員が帰宅できないことも想定されます。

 

帰宅困難者への対応としては、防災用品の備蓄が必要です。

 

従業員1人あたり最低3日分の食料や飲料水、毛布・救急セット・非常用トイレ・発電機・電池などが、備蓄の内容です。

 

使用期限を記載しておく必要もあります。

防災訓練の実施

緊急事態において、冷静に行動するのは難しいため、。命を守る行動を確実に取るためには、防災訓練の実施が必要です。

 

訓練の際には、防災備蓄品の使用方法についてのセミナーも行っておくとより効果的です。

 

従業員が危機意識を持ち、災害の教訓を風化させないようにするために、防災訓練を定期的にすることは、非常に重要です。

企業防災:事業継続の観点での対策方法とは?

次に、事業継続の観点から企業がするべき災害対策について見ていきましょう。

事業継続計画(BCP)の策定

災害などの緊急事態に備えて、被害の早期復旧など事業を継続するための方法を定めたものを事業継続計画(BCP)と言います。

 

計画内容としては、自社の生産拠点や仕入れ先が被災した場合を想定し、代替案を定めておきます。

 

最近では、取引の条件としてBCPの策定を要求している企業もあり、BCPの策定は急務であると言えます。

安否確認システムの導入

災害時には電話やメールがつながりにくくなるため、従業員の安否を迅速に確認できるシステムを整備しておかなければいけません。

 

緊急時に人手が不足すると、事業継続や復旧作業などに支障が出る恐れがあります。

 

必要な人員に対してスムーズに安全確認を行い、最低限の人手を確保できるように準備しておくことが災害時の事業継続には必須です。

 

安否確認システムを導入すると、緊急時に迅速な安否確認と事業継続が行える体制を整えておけます。

バックアップシステムの構築

事業継続の観点からは、災害時のデータ保護のためのバックアップシステムを構築しておくことも大切です。

 

災害によるデータ消失のリスクを避けるため、遠隔地バックアップシステムが注目されています。

 

遠隔地バックアップシステムとは、データやシステムをコピーし、遠隔地において保管するバックアップの方法を指します。

 

遠隔地バックアップシステムには、バックアップ媒体自体を遠隔地に保管する方法やクラウドサービスを利用したクラウドバックアップなど、さまざまな種類があるため、自社に合ったバックアップシステムを利用しましょう。

 

テレワーク環境の整備

災害によって交通機関がストップして、出社が困難になる場合を想定し、テレワーク環境の整備もするといいでしょう。

 

テレワーク環境を整備することは、災害時の事業継続の観点から重要なだけでなく、平常時のワークライフバランスを実現することもできます。

まとめ

自然災害はいつ発生するのかは、予測がつきません。

 

従業員の安全を守り、事業を継続するために、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)を策定し、日頃から、万が一の場合に備えることが大切です。

 

想定しうる災害をリストアップして、防災と事業継続の2つの観点から、どのような対策が必要か具体的に検討するといいでしょう。

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